気になる言葉 on 国語辞典

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「手」。

国語辞典の「手」は長い。

日本国語大辞典』も(もちろん)とても長いよ。今日は何も言わず延々と。実際にはこれに出典付きの用例が加わるのでもっともっともっともっと長い。
て 【手】
【一】〔名〕
〔一〕脊椎動物の前肢の末端部分の総称。腕骨(八個)、掌骨(五個)、指骨(五組一四個)からなる。各種の筋肉におおわれ、物をつかむために発達している。コウモリでは翼手を形成し、第一指に鉤爪があり、非常に長い。水生哺乳類のオットセイなども構造的には陸生の哺乳類と同じだが、退化して魚類の鰭(ひれ)のようになっている。
(1)人体の上肢。躯幹(くかん)の上部で、肩から左右に分かれ出ている部分。肩の関節部分から指先までの部分。
(2)かいな、うでと区別して、てくびから先の部分。その全体だけでなく、指、てのひらなど部分を漠然とさすこともある。
(3)ヒト以外の動物の前肢を(1)(2)に準じていう。前足。また、植物のつるなどをもいう。朝顔の手」
 

〔二〕物の形状または機能を〔一〕に見立てていう。
(1)器物の本体から分かれ出た部分で、そこをにぎり持ち、または物に掛けるようにしたもの。取手(とって)、引手、釣手など。「急須(きゅうす)の手」「手のついた鍋(なべ)」
(2)用具・施設などで、主要部を支える用をする部分。「帆の手」
(3)〔一〕のように、器物の左右に分かれ出た部分。衣服の袖(そで)、鏑矢(かぶらや)の雁股(かりまた)の先の左右に分かれ出た部分など。
(4)〔一〕のように伸び出し、また動く状態になったものの先の部分。「火の手」

〔三〕〔一〕を用いてさまざまな行為をすることに関していう。〔一〕だけを用いるのではない場合、また用いない場合にも代表あるいは象徴としていう。多く、特定の語と連なって慣用句として用いる。
(1)事を行なうのに使用する〔一〕。そのためにはたらかす〔一〕。「手を出す」「手にかける」「手をはずす」「手が届く」「手がはいる」「手をとめる」「手につかない」
(2)仕事をする力。労力。また、仕事をする人。人手。「手があく」「手を貸す」「手が足らぬ」「手がかかる」「手を分かつ」「手がつまる」「手がすく」「手がやける」
(3)仕事をしたり、物事をとりさばいたりする能力。「手に負えぬ」「手にあまる」
(4)人とのかかわりあい、交渉、関係、縁。特に、男女関係にいう。「手をつける」「手を切る」
(5)刀や矢などの武器で傷つけること。また転じて、武器によって受けた傷。てきず。「手を負う」
(6)共犯者をいう、盗人仲間の隠語。〔日本隠語集{1892}〕

〔四〕〔一〕で物を持つところから、所有することに関していう。
(1)所有することになる者をさしていう。「手に入れる」「手にわたる」「手に落ちる」
(2)勝負事で、配られたり取ったりして、自分が自由に使えるようになっているもの。手中にあるもの。手の内。手持ち。また特に、将棋の持駒(もちごま)、花ガルタ、トランプなどの持札。手札。「手が見える」
(3)従えて自分の支配、監督の下にある人々。また、特に中世、部将の配下、軍勢をいう。「手の者」「手下」「手人(てびと)」

〔五〕事を行なうのに〔一〕を用いるところから、事を行なうための方法や技術に関していう。
(1)事を行なうための技術。武芸などのわざ、術など。一定の型ができているわざ。
(2)書の技術。字を書くわざ。字の書き方。筆法。書風。また転じて、書かれた文字。筆跡。手跡。
(3)琴、笛、鼓など、音曲のわざ。奏法。また転じて、一定の曲、または調子、譜。
(4)能、舞踊などでの、きまった舞い方。一定の所作。舞の型。
(5)双六(すごろく)、囲碁、将棋、連珠などで、石あるいは駒を打つ、その一打ち一打ちをいう。また、その打ち方。特に、きまった型の打ち方。
(6)技芸のわざのすぐれている人。わざびと。上手(じょうず)。相撲のすぐれた取り手、たくみな書き手など。
(7)事を行なうための手段。てだて。また、事を行なう方法。やり方。また、人を思いのままにあやつるための手段。かけひきの手段。口実。「手が良い」「手が悪い」「手がない」「手に乗る」

〔六〕ある方面や種類。
(1)ある方角、方面。また、その方面の場所。
(2)各方面に分けられた、それぞれの軍勢をいう。手分けした一部隊。「手を分ける」
(3)種類。

【二】〔語素〕
(下につく場合は連濁して「で」となることもある)
(1)名詞、特に、行為または行為の結果できたものを意味する語について、その物事を機械などを用いず人間の手をもってなしたこと、また、自分の手でなしたことを表わす。「手織」「手料理」「手植え」「手描(てがき)」「手加減」「手打ち」「手造り」「手製」など。
(2)名詞、特に器具や身のまわりの品物を意味する語について、その物が、持ち運び、取扱いに適する小型のものであることを表わす。「手箱」「手槍(てやり)」「手斧(ておの)」「手楯(てだて)」「手文庫」「手帳」「手数珠(てじゅず)」など。
(3)方角や場所を表わす語と熟し、その方向、方面にあるという意味を表わす。「左手」「右手」「上手(かみて)」「下手(しもて)」「面手(おもて=表)」「裏手」「河手」「行手(ゆくて)」「しりえで」「はたて」など。
(4)ある所や人や物を基準にして、それと同じ種類に属していることを表わす。また、固有名詞などについて、稲、陶磁器、古銭、その他の品種、品質を表わす。「なかて」「おくて」「高麗手(こうらいで)」「金襴手(きんらんで)」「祥祐手(しょうゆうで)」「永利手」「厚手」「薄手」「古手」など。
(5)動詞の連用形、または、それに相当する句について、その動作をする人、そのことに当たる人などの意を表わす。また転じて、特にそのことにすぐれた人、名手、上手などの意を表わすこともある。「織手」「射手」「話し手」「嫁のもらい手」など。
(6)その代わりとなるもの。代償。代価。代金。「酒手」など。
(7)中世・近世の入場税、利用税。「山手」「野手」「河手」など。
(8)材料の意を表わす。〓手(つまで)」
(9)そのようになった所を表わす。地形。「井手(いで)」「池溝(うなて)」「隈手(くまで)」など。
(10)形容詞、形容動詞について、もてあつかいが…だ、手や身のこなしが…だ、などの意を添える。また転じて、下の語の意味を強める。「手痛い」「手ごわい」「手厚い」「手広い」「手短」「手丈夫」など。

【三】〔接尾〕
(1)(甲矢(はや)と乙矢(おとや)と二本を持って的に向かう式法から)矢二筋を一組として数える語。的矢、上差(うわざし)について用いる。
(2)囲碁、将棋、連珠などの着手の回数。石や駒を打つ数をかぞえるのに用いる。手数。

 全部読むだけで、ちょっとかしこくなった気がしてしまうよ。ぼくの好きなのは、わりと前の方にあったやつ。

器物の本体から分かれ出た部分で、そこをにぎり持ち、または物に掛けるようにしたもの。取手(とって)、引手、釣手など。「急須(きゅうす)の手」「手のついた鍋(なべ)」

器物の本体から分かれ出た部分」ってなかなか素敵だと思うんだよな。

また「手にかける」は「手」だけにかけるんじゃないけど、「手」に「代表」させてるってのも面白い。

いいね、「手」。


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