クーポン
({フランス}coupon )
本体から切り取っては使用する紙片をいう。
(1)債券の利札、回数券、景品券、配給券、観覧券などの切取式切符。
(2)鉄道、バスなどの乗車券や指定旅館の宿泊券などを一つの組にしたもの。
(3)信用販売における商品購入切符など。
え。ちょっと驚いた。
上は『日本国語大辞典』より。これによると、「クーポン」の本質は、「切り取っては使用する」ところにあるみたいだ。
「切り取ってこそクーポン」というのは『日本国語大辞典』だけではない。『大辞泉』でも同じ感じだ。
クーポン 【フランス coupon】
1 切り取って使用する券。回数券など。
2 乗車券・指定券・宿泊券などを一つづりにしたもの。また、一定の条件で利用できる割引券や優待券。「―券」
3 債券の利札。また、そこに表示された利息のこと。
ぼくの「初クーポン体験」は「ロータスクーポン」かなあ。あれは「応募券」みたいなものだった。それもあってか、ぼくの中で「クーポン」=「切り取って使用する券」という意識はなかったな。
『広辞苑』は一応、一般的な(?)意味を載せているな。
クーポン【coupon フランス】
(1)切取り式の券。回数券や債券の利札の類。
(2)旅行者の便宜のために発行する、船車その他各種乗り物の通し切符や指定旅館の宿泊券などを一綴にしたもの。
(3)一般に、割引券・優待券。
ようやく(3)に、ぼくのイメージする「クーポン」が出てきたな。
しかし。
日本人のためにわかりやすい語釈を提供することを使命とする(?)『三省堂国語辞典』も第一義に「ひとつづりの切符」としている。
なぜだ!? と、フランス語辞典をあたろうと思ったんだけど、なぜかみつからない。『ランダムハウス英和大辞典』の語源をみてみた。
[1822. <フランス語;古期フランス語 colpon 切り取られた1枚(colper「切る」より)]
なるほどなあ。クーポンにはもともと「切る」という意味があったんだな。それで国語辞典は律儀に「切り取るもの」としているわけだ。
ただ、それは余計な律儀さなのかもしれないよ。語源を調べた『ランダムハウス英和大辞典』のcouponを引いておこう。
coupon
(1)クーポン、(商品添付の)割引券、景品引換券;優待券;(販売広告の)申込券;資料請求券;食券;(食品・医療などの)配給切符
(2)(鉄道・バスなどの)クーポン式乗車券,一続きになった乗車[宿泊]券;回数券(以下略)
「クーポン式」って言葉がまあ気になるけど、でも国語辞典のように「本体から切り離す」とかなんとか、そこを強調してはいないような感じ。国語辞典の人はまじめすぎるんじゃないのか。
念のためOALDなんかもみておこうか。
coupon
1 a small piece of printed paper that you can exchange for sth or that gives you the right to buy sth at a cheaper price than normal.
2. a printed form, often cut out from a newspaper, that is used to enter a competition, order goods, etc.
ね。
ぼくには、国語辞典の人が、まじめに(まじめすぎるほどに)語源にあたったもので、行き過ぎた語釈になったように見えるな。