気になる言葉 on 国語辞典

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「当分」は進化主義的悲しい言葉?

「当分」は『新明解』に次のように定義されている。

とうぶん【当分】
その状態がしばらく続き、変化の起こることは現状に置いては期待出来ないことを表す。

この語釈、なんとなくさびしい感じがしないかな。

変化が期待出来ない」ってのは、「本当は期待したいのに」って意味のように思える。

「期待」については『日本国語大辞典』も「あてにして、心の中で待ちもうけること」としているしな。

つまり『新明解』の「当分」は、「変化を心待ちにしているのに、その変化が訪れる可能性が皆無に等しい状況」とかなんとか、そういう意味だとしているんだろう。

他の辞書には、さほど悲観的な様子が見えない中、『新明解』が目立つなあ。たとえば『三省堂国語辞典』は次のような感じ。

とうぶん【当分】
〔これから〕しばらく(の間)。当座。

たんじゅんに「for a while」だよね。『広辞苑』も「事があってから少しの間。当座」ないし「近い将来まで、しばらくの間」としている。

「当分」の語釈を見る限り、『新明解』は「進化主義」的立場に立っているんだろうな。変化こそ進化につながり、善を意味するって感じ。したがって、状況が固定化する際に使用する「当面」という語が許せないんだろう。

いろいろ考えさせてくれる、面白い語釈だった。


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