気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「割烹」ってなんだっけ?

たまに使うこともある「割烹」(かっぽう)。「ちょっと高級目の和食料理屋」みたいな意味で使っているんだけど、正確にはどういう意味だろう?

いつものように『日本国語大辞典』にたずねてみた。

かっ‐ぽう

[‥パウ] 【割烹・割亨】
(「割」はさく、「烹」「亨」は煮るの意)

(1)食物の調理をすること。料理。
(2)「かっぽうてん(割烹店)」に同じ。
(3)酌婦・仲居をいう、盗人仲間の隠語。〔隠語輯覧{1915}〕

そっか。「割」は「さく」、「烹」は「煮る」で「調理すること」を言ったのだなあ。「(高級)和食屋」の意味の「割烹」は「割烹店」と呼ぶのが正式(?)らしい。

でも、「割烹」=「料理」の意味で使ったりはしないよなあ…なんて考えた。「趣味は割烹です」とか言われると、「割烹料理店巡りが好きな(イヤミな)金持ち」みたいな感じだするもんなあ。

広辞苑』も似たような感じ。

かっぽう【割烹】
(1)(肉を割き烹る意から)食物の調理。多く日本料理にいう。
(2) (1)を供する料理屋。

「料理屋」の意味でも使うとあるけど、やはり「割烹」=「調理」だとしているな。もしかして、オリジナルの「割烹」=「調理」の意味は廃れてしまったんだろうか?

そんなことを考えたけど、ぜんぜん間違ってた(読んでいる方のほとんどは既に気付いていると思うけど)。

ぼくはしばらく「割烹」=「調理」は死語かもと考えていた。

でも。写真にも載せたように「割烹着」ってのがあるじゃんね。正確な意味は調べてみたことがないけど、一般的には料理のときに着る和服みたいなイメージだ。そうすると「割烹着」=「料理着」であり、必然的に(?)「割烹」=「料理」となる

「割烹」=「料理」の意味が今でも身近に(?)生き残っていることを知り、ちょっと落ち着いた。

もともとは「料理」の意味だったんだけど、その言葉が古くなって格式ばるに連れ、格式のある料理店を指すようになってきたのかな。

納得したところで、ついでに「割烹着」についても、ちょっとだけ調べてみた。するとちょっと驚く事実に出会ったよ。出典は『日本大百科全書』。

割烹着
(前略)洋風のエプロンを取り入れて考案され、労働着として広まった。昭和に入ってから流行し、1932年(昭和7)国防婦人会結成のとき、そのユニフォームとなった。(後略)

え。割烹着ってエプロンから発想されたんだ!  エプロンを知らない時代の人は、エプロン的用途の服を用意していなかったのかな。てっきり「割烹着」ってのは古くから日本にあったものだと思っていたよ。

『世界大百科事典』にも「1882年,東京の日本橋に初めて設立された赤堀割烹教場(現,赤堀栄養専門学校)で考案された」なんて記述があるな。

「割烹」=「料理」であることを知り、そして「割烹着」ってのが比較的新しいものであることを知った、有意義な1日だった(^^)。


ミシュラン一つ星【新宿割烹中嶋】のお昼の献立「いわし彩々」Lunch of NAKAJIMA, The Michelin starred restaurant in Sinjuku.【飯動画】