ちょっと「要請」がブームだね。
一応、念の為になんだけど、「要請」ってどういう意味だっけ?
と、国語辞典を引いてちょっと驚いたなあ。たとえば『広辞苑』をみる。
ひとつ目の意味はいいんだ。ぼくもその「要請」なら知っている。
(1)強く請いもとめること。必要とすること。
ぼくもこの意味なら知っている。でも2番目をみて驚いたな(もちろん恥じた)。
(2)公理のように自明ではないが、証明不可能な命題で、学問上または実践上、原理として承認されているもの。たとえばカントは道徳命令を成立させる根拠として、自由、霊魂の不死、神の存在を理論理性によっては証明できない実践理性の要請として認めた。
「要請」とは、「証明不可能な命題」なんだそうだ。語釈の中の「要請」は、「命題」と読まなくても意味が通じそうだけど、まあ『広辞苑』が言うんだから「命題」という意味があるんだろう。
『日本国語大辞典』もみてみた。
よう‐せい[エウ‥] 【要請】
〔名〕
(1)(─する)必要な事柄を、その実現のために願い出て求めること。
(2)(─する)必要とすること。要求。
(3)哲学で、それ自体の証明はできないが、学問的認識を成立させるためになければならないと要求されている根本的な命題。公準。
(4)ユークリッドがその幾何学を展開する際、出発点として採用した一四個の命題のうち、より幾何学的な性格をもつ五個のこと。「任意の点より任意の点へ直線を引くことができる」の類。公準。→普通公理。
むむ。『広辞苑』よりさらに一歩進んで、公準のことも「要請」というのだそうだ。
おそらくは、出会ったことのある用例なのだろうなあ。しかし「任意の点より任意の点へ直線を引くことができるというのは要請です」と読んでも、ぼくはこの「要請」を普通の意味(請い求めること)で理解してきたんだろうな。そしてそのたびに「要請」とか言わずに「公準」と言えばいいのに、と思ってきたんだろう。
でもね。
Wikipediaで「ユークリッド原論」のページをみても、ちゃんと「要請」を使っているね。
『原論』ではいくつかの定義からはじまり、5つの公準(要請)と、5つ(又は9つ)の公理(共通概念)が提示されている。
きっと、いつかどこかで、「要請」の意味がわからずに恥ずかしい言動をしたんだろうなあと、いまさら赤面する(^^)。