気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「多生の縁」と「他生の縁」

ちょっと恥ずかしい話をしているのかもしれないけれど。ぼくは「多生」(たしょう)という言葉があることを知らなかったよ。

そですりあうもたしょうのえん」は「袖擦りあうも多生の縁」と書いたりもするそうだ。

この場合の「たしょうのえん」、ぼくは「他生の縁」としか書かないのだと思っていた。

日本国語大辞典』も、「他生の縁」は「多生の縁」と同じだよ、と書いている。。

そで 擦(す)り合(あ)うも=他生(たしょう)[=多生(たしょう)]の縁(えん)
「そで(袖)振り合うも他生の縁」に同じ。

このことわざを知ったのは小学5年生とかの頃だよね。年齢にすれば11歳くらい? それから40年以上、ぼくは「他生の縁」に疑いをもつことすらできなかったのだなあ。

多生」「他生」の意味もみておこうか。いずれも『日本国語大辞典』。

まず、ぼくの知らなかった「多生」。

た‐しょう[‥シャウ] 【多生】
(1)何度も生をかえてこの世に生まれかわること。多くの生死を繰り返して輪廻(りんね)すること
(2)多数を生かすこと。
(3)「たしょう(多生)の縁」の略。

で、ぼくの思い込んでいた方の「他生」。

た‐しょう[‥シャウ] 【他生】
(1)この世から見て過去および未来の生をいう称。
(2)そのもの以外の他の原因で、生ずること。

なるほどね。「多」よりも「他」の方が「奥ゆかしい」感じがするじゃないかとか思うけど、でも第一義的には同じような意味なんだね。

さらに、ちょっとショックだったのは『全文全訳古語辞典』。

多生の縁(えん)
何度も生まれかわる間に、互いが結ばれる因縁。
[参考] 本来はこの字だが「他生の縁」と書くことも多い。

がーん。本来は「多生」なんだね。ぼくの40年間は間違い以外のなにものでもない人生だったんだ。

「他生の縁」は好きな言い回しのひとつで、これまで何度も使ってきたのになあ。みんな「ばーか」と思ってぼくを見ていたのかな…。


大切な人との《縁》も永遠ではなく必ず終わりがあります【なごやか仏教16】