気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「款」の字の意味は不思議

」という字がある。「約款」などで用いる字だ。

この字、字の左側を見ても右側をみても、なんだか「うさんくさい」感じがする。でも漢字の意味は「まこと。まろやかで欠けめのない心。よろこぶ、よろこび、にこにことよろこぶ」なんてような意味を持つんだそうだよ。

でも、新選漢和辞典で「款」をみると「〓は空虚なこと。欠は気が不足であくびをすること。款は、欲求不満の状態をいう」なんて書いてある。こりゃどうみても悪い意味にしか取れないじゃんね。

それが「まこと」とか「まろやか」なんて意味を持つのはなんでなんだろうなあ。と、日本語漢字辞典も見てみた。

祟の省略形+欠。祟は呪能を持つ獣の形。呪能を持つ獣を用いて呪技を行い、その感応を期待することから、まこと、まごころの意を表す。

これは面白いぞ。逆説的に(?)「まこと」を表現するのか!

他にもそんな説を載せている辞書はあるのかと、字通を見ると、ちょっと似たことが書いてあった。

〓(すい)+欠(けん)。〓は祟(すい)の簡体。祟は呪能をもつ獣の形。これを殴って敵の呪詛を無力にする共感呪術を殺といい、これに祈ってその感応を期待することを款という。

字の形と反対の意味を持っているようなのは当然で、ある種、「一周回って」くる意味なんだな。

ちなみに、日本国語大辞典では次のように定義されている(抄)。

かん[クヮン] 【款】

(1)まごころ。まこと。誠実。

(2)交わり。親しみ。よしみ。

(3)よろこぶこと。

(4)文字をくぼめて刻むこと。または、鏡や鼎(かなえ)などにくぼめて刻まれた文字。(5)法令、条文などの箇条書き。ひとつがき。

(6)予算書、決算書などの分類に用いる語。部の下、項の上のまとめの単位。

(7)罪人の白状。口供状。

「款」の字を良い(正当な)意味で用いることに、ちょっと納得がいったよ。


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