「款」という字がある。「約款」などで用いる字だ。
この字、字の左側を見ても右側をみても、なんだか「うさんくさい」感じがする。でも漢字の意味は「まこと。まろやかで欠けめのない心。よろこぶ、よろこび、にこにことよろこぶ」なんてような意味を持つんだそうだよ。
「款」の字の意味に納得がいかないなあ…(以下、新選漢和辞典より)
— maeda, h (@torisan3500) 2023年1月28日
> ①のぞむ。
②〈よろこ・ぶ〉楽しむ。
③〈まこと〉まごころ。「款誠」
④うちとける。
⑤もてなす。「款待」
以下略
でも、新選漢和辞典で「款」をみると「は空虚なこと。欠は気が不足であくびをすること。款は、欲求不満の状態をいう」なんて書いてある。こりゃどうみても悪い意味にしか取れないじゃんね。
それが「まこと」とか「まろやか」なんて意味を持つのはなんでなんだろうなあ。と、日本語漢字辞典も見てみた。
祟の省略形+欠。祟は呪能を持つ獣の形。呪能を持つ獣を用いて呪技を行い、その感応を期待することから、まこと、まごころの意を表す。
これは面白いぞ。逆説的に(?)「まこと」を表現するのか!
他にもそんな説を載せている辞書はあるのかと、字通を見ると、ちょっと似たことが書いてあった。
(すい)+欠(けん)。は祟(すい)の簡体。祟は呪能をもつ獣の形。これを殴って敵の呪詛を無力にする共感呪術を殺といい、これに祈ってその感応を期待することを款という。
字の形と反対の意味を持っているようなのは当然で、ある種、「一周回って」くる意味なんだな。
ちなみに、日本国語大辞典では次のように定義されている(抄)。
かん[クヮン] 【款】
(1)まごころ。まこと。誠実。
(2)交わり。親しみ。よしみ。
(3)よろこぶこと。
(4)文字をくぼめて刻むこと。または、鏡や鼎(かなえ)などにくぼめて刻まれた文字。(5)法令、条文などの箇条書き。ひとつがき。
(6)予算書、決算書などの分類に用いる語。部の下、項の上のまとめの単位。
(7)罪人の白状。口供状。
「款」の字を良い(正当な)意味で用いることに、ちょっと納得がいったよ。