気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「自爆」の国語辞典的定義は?

多くの国語辞典で「自爆」が立項されている。それもなんとなく不思議なんだけど、定義にいろいろあることに、ちょっと驚いた。

最初に繰っていたのは新明解の第三版だ。

じばく【自爆】
自分の乗っている飛行機を敵の軍艦などに体当りさせ、爆発させて死ぬこと。[広義では、敵に乗っ取られる前に乗機・乗艦もろとも爆死することを指す]

これ、なんかいろいろ突っ込みたくなるよね。なぜ自分は「飛行機」限定で、また相手は「軍艦」限定なんだろう? また、「自爆」に「死ぬこと」は絶対必要条件なんだろうか? さらに「体当たり」も必要条件ではないのではないか?

気になったので、いくつか他の辞書もみてみた。たとえば広辞苑は次のような感じ。

じばく【自爆】
①戦況不利の際、艦船・飛行機などを敵に委ねることを避けるため自ら爆破すること。
②被弾した飛行機などを、敵に体当りさせて爆発させること。
③危害を与えるために、身辺に持つ爆弾を自身もろとも爆発させること。

ふむ。これは新明解(第三版)とずいぶん違うね。爆発させる乗り物の限定もとれている。ただ、「戦況不利の際」という条件を満たす必要があるのかどうか、ちょっと疑問に思う。また「②」でも「被弾した飛行機」が必要なのかどうか、疑問だ。

大辞泉は次のような感じだ。

じ‐ばく【自爆】

1 航空機・艦船・軍事施設などの機密を守り、敵の手に渡らないように爆薬を仕掛け味方の手で爆破すること。「―装置」

2 爆薬を積んだ飛行機や自動車に乗って、また、自分の体に爆薬を巻き付けて敵陣に突っ込み爆発させること。テロの一手段。

ここでも「敵の手に渡らないように」という条件がある。

思うに、このあたりの記述は「言葉の定義」と「歴史的な現象」をごったにしている感じだ。「自爆とはこういうものでした」というのと「自爆とはこういう意味です」の混同ね。その混同があるから、「定義」なのか「経緯」なのか、よくわからなくなる

そんなことを考えながら、日本国語大辞典を見る。こちらはトラッドなだけに、さらに的はずれな定義があるかもしれないと期待しつつ(笑)。

自分の乗る軍艦、飛行機などをみずから爆破すること。転じて、自分を破滅させるような行為をすることにもいう。

さて。なんだか日国らしくない感じ? 「自分を破滅させるような行為」を「自爆」と呼んでいるのも、なんだか三省堂国語辞典風にみえる。でもここまでの中では一番「適切」な定義のようにも感じるな。

なお、新明解も今の版では定義がちょっと変わっている(引かないけれど)。10冊くらい見比べてみたところで、ぼくがいちばん気に入ったのは岩波国語辞典かな。

じばく【自爆】
①自ら爆発を起こして、防御や攻撃をすること。(ア)軍艦などを敵に取られないように、自分側で爆破すること。(イ)被弾などで墜落しそうな航空機を、敵地に体当たりで爆発させること。(ウ)自分が乗る航空機・車や身に帯びた爆弾を、敵に体当たりで爆発させること。
②比喩的に、自らの不利を招くこと。

「定義」と「現象」を区別しつつ、最近の用例についても触れているのがわかりやすく感じるな。

なお、ChatGPTにも尋ねてみたよ。

Q「自爆」とは何なのか

A「自爆」とは、自らの身体や所有物を破壊することを指します。特に、テロリストなどが使用する爆弾を装着して、自らの死とともに周囲の人々や施設を破壊することを指すことが多いです。この行為は、非常に残虐的で危険なものであり、多くの場合、多くの人々に損害をもたらすことがあります。自爆行為は、政治的、宗教的、経済的な理由などによって引き起こされることがありますが、いずれの場合も拒絶されるべきです。

ちょっとイマイチだね。

ところで9.11はリアルタイムで見ていた。最初の突入の時点で「ビルを狙ったようだ」と感じた人もいるんだな。ぼくには全くわからなかった。


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