「呼吸」は「異化」の一種
毎度恥ずかしい話ばかりするけれど、「呼吸」が「異化」の一種だなんて全く知らなかった。
生物の行う同化と異化
— maeda hiroaki (@torisan3500) September 1, 2017
≫ 光合成は外部から取り込んだ物質を、自分のからだを構成する有機物に変換する過程(同化の一種)だが、呼吸はその逆で、有機物の分解によってエネルギーを得る過程(異化の一種)である。
via 『新しい高校生物の教科書』(栃内新、左巻健男)
「異化」ってのは(すごく恥ずかしいことなんだろうけれど)、ロシア・フォルマリズムないしアート用語としてしか知らなかった。
『日本国語大辞典』で「異化」をみれば「異化作用」のことだとあるので「異化作用」をひいてみた。
いか‐さよう[イクヮ‥] 【異化作用】
(1)生物体の物質代謝のうち、体内の複雑な化合物をより簡単な物質に化学的に分解する作用。その際、放出されるエネルギーが生活活動に利用される。⇔同化作用(2)。
(2)言語学で、互いに隣接し、また近くに位置した二音が、差異を強めたり、新たにつくり出したりして、類似点のより少ない音に変化すること。隣接している二音間に見られる場合は隣接異化と呼ばれ、近くに位置しているが隣接してはいない二音間に見られる場合は離隔異化と呼ばれる。⇔同化作用(3)。
なるほどなあ。ロシア・フォルマリズムのことなど何も書いてない。第一義から生物的代謝の意味だ。
どうやら「異化」を目にすれば生物学系の話だと考えるのが普通のことなのかもしれない。
小型辞書ならどうなのかと『新明解』を開いてみた。
いか【異化】
〔生物が〕外界から取り入れた物質を、科学的により簡単な組成の物質に分解すること。
やはりロシア・フォルマリズムの「ロ」もない。『三省堂国語辞典』も同様だな。
「生物学」を全く勉強しなかったというわけではないのに、しかし代謝の世界での「異化」が「ロシア・フォルマリズム」より有名なのには驚きだ。
新しい使い方を知ることができたのは良かったな、とは思った。しかしここまで美学系の使い方が無視されているとちょっと不安になるな。
というわけでいろいろみていると『広辞苑』にあった。
いか【異化】
(1)〔美〕(ア)ロシア・フォルマリズムの芸術説の一つ。シクロフスキーらが提唱。題材を非現実化・異常化してその知覚の過程に注意を向けさせる作用を芸術の特質とした。
(イ)ブレヒトの作劇上の中心概念。異化効果に同じ。(以下略)
ようやくぼくが知っている方の「異化」に出会った。しかも第一義だ。ただ、多くの辞書が第一義にしないばかりでなく、そもそも触れてもいないことは驚き。ぼくは二重の意味で「異化」を「誤解」しているのかもしれない。
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