なんの話か通じないだろうな。「台風一過」というとき、台風が「素早く」過ぎ去ることが必要条件なのかどうか、気になったのだ。
ぼくは、台風が過ぎ去って晴れ渡れば、常に「台風一過」だと表現していた。それは間違いなのかもしれない。
なぜ「間違い」かもしれないのか。「一過」を見る。たとえば『小学新国語辞典』だ。
いっか【一過】
さっと通り過ぎること。例:台風一過
あまりに明らかな定義だ。台風が「さっと通り過ぎ」て、そのときの様子を「台風一過」と呼ぶのだ。停滞した台風がようやく過ぎ去って、そこに青空が広がっても「台風一過」と呼んではならないのだ。
ほんとうか?
『広辞苑』でも「一過」をみてみた。
いっか【一過】
一度に通過すること。さっと過ぎてしまうこと。「台風――」。――せい【一過性】症状・現象が短い間に起こり、また消える性質のもの。
ここでわざわざ「台風一過」を例示しているということは、やはり「台風一過」の台風は「さっと過ぎ去る」ものであることが必要なのか。
念のため、同じく『広辞苑』で、「台風一過」を引いてみる。すると「台風」の子項目として「台風一過」がある。
たいふういっか【台風一過】
台風が過ぎ去った後にはとかく上天気が来るということ。また、大きな事件が決着し、晴れ晴れとすること。
おや、こちらには「素早く」とか「さっと」という表現がない。「上天気が来るということ」という語釈は気になるが、どうやら台風が過ぎて上天気がくれば、それはすなわち「台風一過」であるような感じ。
実は、手元の辞書では「台風一過」を立項している辞書が少ない様子。たいてい「一過」だけを定義して、あとは自分で合成せよという感じなのだろう。
しかしどうなんだろう。『広辞苑』の「台風一過」をみれば、「台風一過」状態(?)に「高速台風」は必要ないようにもみえる。ただち「一過」の中で例示されている「台風一過」では、台風の高速性が必要であるようにもみえる。
勝手読みをすれば。
そもそも単独の「一過」と、「台風一過」の「一過」は、ちょっと別の意味を持つのではないか。
ぼくの言語感覚だと、「台風一過」を使うための必要条件に、台風の「高速性」が必要であるというのは違和感がある。
さて、実際のところはどうなんだろうか。
参考までに。『プログレッシブ和英中辞典』で「一過」をみると、次のような記述があった。
台風一過快晴となった
It cleared up after the typhoon passed.
これだけみると「迅速性」ないし「高速性」は必要ないようにもみえる。はてさて。
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