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気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「肉欲」を理解したいなら『新明解』か『三省堂国語辞典』だな!

その他

#間違えて、他のブログに投稿しちゃいました^^。そちらを削除するのもなんなので、こちらにそのまま転載します。「同じじゃん!」と思った方、すみません。以下、本題。

まあ普通は「肉欲」が何をイメージしているのかはたいていの人が知っている。

ちょっと面白いのは国語辞典の記述だ。

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上の写真は『明鏡』(電子辞書も持っているんだよ、ってことをアピールしようと電子辞書の写真を撮ってみた)。「性欲」はよかろう。それが一般的なイメージだと思う。ただ「肉体の欲望」というのがよくわからないな。

肉体「への」欲望なのか、それとも肉体「による」欲望なのかもわからないし。

ただ、多くの辞書がこうした「ぼかしかた」(?)を好んでいるようではある。

たとえば『岩波国語辞典』は次のように定義している。

肉欲【肉欲・肉慾】
肉体上の欲望。特に、性欲。

これまた「特に、性欲」ってのはいい。しかし「肉体上の欲望」と「ぼかしてみました」的な語釈が必要なのかどうか。たとえば「排泄欲」や「食欲」をさして「肉欲」と表現する人がいるかどうか。

日本国語大辞典』もぼかし気味に表現したいんだろうなあという感じ。

にく‐よく 【肉欲】
〔名〕肉体上の欲情。男女が、それぞれ異性の肉体を求めようとする欲望。性欲。色欲。情欲。

「男女が」というのは「時代」に合わないかもしれないけれど、とりあえず最初の「肉体上の欲情」はいらないんじゃないか。

確かに『新漢語林』などをみると、「肉欲」とは「肉体上の欲望。食欲・色欲など」と書いてあるので、そもそもは「食欲」や「排泄欲」なども含んだ言葉なのかもしれない。ただ、日本語で「肉欲」といえば「性欲」以外の意味ではないのではないか。

そんなことを思いながら辞書を眺めていた。お気に入りは『新明解』と『三省堂国語辞典』だな。

『新明解』からいこう。

にくよく【肉欲・肉慾】
〔けがらわしいもの、禁圧されるべきものとして見た〕性欲。

すごいじゃん。「性欲」というのは禁圧されるべきものではないという強硬な主張も埋め込んでる。『新明解』の「主張」には「うざい」感じをうけることも多いけれど、この語釈はなかなか素敵だ。

でも「王者」を決めるなら『三省堂国語辞典』にしたい。

にくよく[肉欲]
(名)肉体のまじわりをのぞむ欲望

なるほど。「肉欲」と「性欲」は違うものかもしれない。『三省堂国語辞典』は「肉欲と性欲はまた別のものでしょ?」という問いかけをしているのだ。その問いかけはあまりにラディカルで、正直に答えれば社会的に抹殺されるんじゃないかという緊張を感じさせてくれたりもする。

「端的に」表現するのをモットーとする『三省堂国語辞典』が、「端的とはラディカルにつながるのだ」という主義主張(?)を見せてくれる語釈となっている。

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