気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

シアサッテをめぐる東西対立

やのあさって」ってのはけっこう難しい言葉だ。『小学新国語辞典』でみてみる。

やのあさって
あさっての次の日。しあさって。【参考】地域によって、「しあさって」の次の日をいう所もある。

そうそう。 「しあさって」がいつなのかについては二説あるという話はきいていた。大辞典ではどうなっているのか、『日本国語大辞典』を確認してみた。

面白かったので「語誌欄」をひいておく。

(1)「あさっての翌日」は、東日本がヤノアサッテ、西日本がシアサッテという東西対立分布がある。しかし、都区内は例外的にシアサッテである。「あさっての翌々日」は、西日本がゴアサッテ、都区内はヤノアサッテ、都区内を除く関東一帯はシアサッテである。すなわち、「あさっての翌日」と「翌々日」の組合せは、西日本がシアサッテ/ゴアサッテ、都区内がシアサッテ/ヤノアサッテ、都区内を除く関東一帯は、逆に、ヤノアサッテ/シアサッテということになる。

(2)西日本の体系は、シアサッテの「シ」を「四」と意識したために生まれたと考えられる。関東の体系は、西日本から伝播してきたシアサッテを、起点をずらして数えたものであろう。都区内の体系は、シアサッテをそれまでのヤノアサッテに替わる表現として受け入れ、在来のヤノアサッテを一日おくらせたと考えられる。

「東西対立分布」があるものの、東京都区内は西日本と同じ語法を用いるんだそうだ。

ちなみに、中高を大阪で過ごしたぼくは「明後日の翌々日」を「ゴアサッテ」と言っていたけれど、それはあくまでも「冗談」のつもりだった。「4」の次だから「5」と、フザケタつもりだった。

でも、こんな立派な辞書に載る「正当」な言葉だったのだなあ。

それにしても。ぼくは人が「やのあさって」という語を使うのを、ほとんど聞いたことがない。みんな「ちょっと紛らわしいんだよね」という意識があるんだろうか。


恋人たちのカレンダー 岡田有希子