いつものように、小学生用の国語辞典を眺めていた。そこに「やってくる」が立項されていて驚いた。
「やってくる」ってのは、まあ「来る」って意味だろう? 辞書にあるってことは、なにか隠れた意味があるんだろうか? 「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」とかつければまあ固有名詞化するけれど…
『チャレンジ小学国語辞典』から引く。
やってくる
こちらに来る。向こうから近づいてくる。
なはは。
この項目のポイントはなんだ? 誰が、どういう理由で「やってくる」を辞書で引くと考えて立項しているんだ?
『小学新国語辞典』にもあるよ。
やってくる
来る。自分のほうに近づいて来る。
感性の錆びついたぼくには、「やってくる」立項の意図がよくみえない。
小学生向け辞書ってのは不思議だねと思っていたんだけど…。じつは「やってくる」、ほとんどの辞書に立項される言葉だった。
『広辞苑』をみてみよう。
やってくる
(1)こちらへ向かって来る。
(2)以前から続けて、今に至る。
なるほど。(2)の意味は辞書に(いかにも)ありそうな説明ではあるかなあ。
『日本国語大辞典』も立項しているよ。
やってくる
(1)こちらに向かって来る。こちらへ向かって来て、ここに至る。くる。
(2)仕事、生活などを維持して、現在に至る。
(2)を「仕事、生活など」と、いくぶん限定気味に使っているのが面白いかな。
でもまあ大したことじゃない^^。「なんで載せてるかなあ」と、疑問に思いつつ『三省堂国語辞典』なら何か面白いことが載せてあるかななんて考えた。これが大当たり。
ぼくはかなり衝撃を受けたんだけどどうだろう…
やってくる
(1)「来る」を強めたことば。
(2)【仕事・生活などを】続けてくる。
「やってくる」というのは「来る」を強めているんだそうだ。つまり「やって」というのは「来る」を強める言葉なんだ。
そういえば、「『やってくる』の『やって』の意味を説明せよ」と言われると難しいな。
国語辞典に「やってくる」が載っているのは「やって」の意味に疑問を持った人がいたからなんだろう。最初に疑問をもった人、偉いね!
ほかに同じ使い方をする「やって」はあるんだろうか。
すぐに思いつきはしないけど、なんとなく幸せになった週末の入り口だった。