気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「とちくるう」という語は辞書にない。

ほとんどの辞書に「とちくるう」という語は載っていない。ただし、たまに「とちぐるう」という言葉を載せているものはある。

だけど、どうも辞書の「とちぐるう」は、一般的な「とちくるう」とは違うような気がするんだ。

「とちぐるう」を載せる『日本国語大辞典』を引く。

とち‐ぐる・う[‥ぐるふ] 【─狂】
(「とち」は接頭語。「どちぐるう」とも)
たわいのないことをしてさわぐ。たわむれる。ざれあう。

ぼくの知る(あるいは思い込んでいる)「とちくるう」はこんな意味じゃないな。「何をとちくるってるんだよ」というと、「おまえは正気を失っているぞ」というような意味なんじゃないのか。

「騒ぐ」とか「たわむれる」とか、そんなニュアンスではないように思うんだがなあ。

と、困っていると、ぼくの知る意味の「とちくるう」を載せている辞書があった! 『三省堂国語辞典』だ。

とちくるう【とち狂う】
急に正しい判断力を失う。

そうそう、これだよ! ぼくはこれまでに、この意味で「とちくるう」という言葉を使ってきた。ただ、ちょっと見たところでは、この意味で「とちくるう」を載せているのは『三省堂国語辞典』のみだ。

冒頭に書いたように、多くの辞書が「とちくるう」という言葉を立項すらしていない。

 世の中には「とちくるう」という言葉がないのかどうか。「とちぐるう」と「とちくるう」は同じ意味の言葉なのかどうか。同じ言葉なのだとすると、『日本国語大辞典』や『広辞苑』が「正気を失う」的な意味を載せていないのはなぜなのか。

ぼくはどこで「とちくるう」を知ったんだろうかなあ。

記憶していればまた機会をみつけて追求してみたいな。


「気狂いピエロ」Pierrot Le Fou(1965仏・伊)

気違い部落周游紀行 (冨山房百科文庫 31)

気違い部落周游紀行 (冨山房百科文庫 31)