気になる言葉 on 国語辞典

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「サイボーグ」on 国語辞典

『チャレンジ小学国語辞典』や『小学新国語辞典』などには「サイボーグ」の項目がない

それにも驚いたんだけど、『日本国語大辞典』の「サイボーグ」にもけっこう驚いた。

サイボーグ
({英}cyborg (=cybernetic organism の短縮形))
特殊な環境に順応できるように、人工臓器などで体の一部を改造された生物。完全な機械人形でありながら、人間や動物とそっくりの外見を持つものについてもいう。SF小説などに登場する。また、感情を持たない機械のような人間や、人間技とは思えない能力を発揮する人間をたとえてもいう。

「サイボーグ」は「環境順応のため」という目的をもっていないといけないものらしい。

「環境順応」もなかなか難しい基準だけど、たとえば単純な「能力アップ」のための人工パーツ化では「サイボーグ」になりえないということか。

大辞泉』も同様の立場にたつ。

サイボーグ
宇宙空間や海底などの特殊な環境に順応できるように、人工臓器でからだの一部を改造した人間。改造人間。

引用しないけれど『明鏡』も同じ立場だ。

この立場は、「サイボーグ」という言葉が誕生したときの目的によるようだ。

なるほどねえ。しかし今は、「サイボーグ」をもっと広い意味で使っていないだろうか。国語辞典的にそういう立場はないのだろうか。

そんなことを考えたんだけど、やっぱりあった。

たとえば『三省堂国語辞典』だ。

サイボーグ
人工臓器などでからだの一部を改造した人。

ここには「目的」も何もない。しかしなんだ、「人工臓器などで」というのはどうなんだ。「人工臓器」ってのは今後、ますます増えてくるだろう。豚を使って臓器を培養(?)するようになるって話もきく。そうした「純医療行為」の結果登場してきた人も「サイボーグ」と呼んで良いのかどうか。

あるいは「臓器」と限定しているのも気になるね。臓器とは一般に「内臓器官」の意味だけど、耳とか鼻とか、あるいは手足を「サイボーグ化」するようなことはないんだろうか。

ぼくは疑問に思うんだけど『新明解』も同じような主張をしているな。

サイボーグ
人工臓器でからだの一部を改造された超能力の人間。

「超能力人間」という言い回しはまあおしゃれなんだけど。

「国語辞典のサイボーグは難しいなあ」と思いながらパラパラと。今回いちばんしっくりいったのは『広辞苑』だった。

サイボーグ
動物、特に人間の生活機能の重要な部分を電子機器などに代行させたもの。

「目的」に限定されない。また「人工臓器」でなく「電子機器など」としているのも、個人的な理解に一致する。

とりあえず。「新しいもの」の定義をすることの難しさがほの見えるようで、興味深い探索だった。


『 戦え!! 人造人間キカイダー 』 秀夕木とコロムビアゆりかご会

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