気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

「私服」

ぼくが気づいたのは20年ほど前かなあ。「私服」という語を「スーツ」の対義語(?)として使う人がいる。対義語というか、まあ「普段着」というような意味か。

「私服」にそんな意味はないと思うんだよな…

し‐ふく 【私服】

1 制服に対して、個人の服。⇔官服。

2 「私服刑事」の略。

大辞泉』もこんな感じ。「普段着」なんて意味はない。

詳しい辞書には「私服」=「普段着」説があるのだろうか? 『日本国語大辞典』をみてみる。

しふく 【私服】
(1)制服や官服に対して、個人の立場で着る衣服。ある」
(2)「しふくけいじ(私服刑事)」の略。

大辞泉』と同じじゃん。『チャレンジ小学国語辞典』をみても同じような感じだったよ。

「私服」=「普段着」なんてのは、単なる勘違いに始まって、一部の人が使うようになっただけなのかな。

ちなみに「私服」の一般的な反対語は「官服」だよね。

かんぷく[クヮン‥] 【官服】

官吏の制服。また、国から支給される服。官給の服。

これも『日本国語大辞典』ね。

ここから「お上の服とは違うくだけた服」=「私服」なんて言葉が出てきたんだろうか。

云々と悩んでいると、ちょっと衝撃的な辞書に出会った。たまに「行き過ぎ」を感じさせてくれる『三省堂国語辞典だ(ちなみに『新明解』は「しばしば」行き過ぎを感じる^^)。

しふく【私服】
(1)個人が私的に着る衣服。
(2)〔俗〕刑事。
(3)〔防衛省の〕自衛官ではない職員。
(4)ふだん着。

がーん。『三省堂国語辞典』が「突っ走って」認めているんだなあ。「私服=ふだん着」説。

「言葉に乱れなんてない。言葉にあるのは進化だけだ」風の立場にたつ『三省堂国語辞典』らしいといえばそうなのか。

でもぼくは。「ふだん着」を「私服」というのはそうとう気持ち悪いな。

エンゼルスの大谷は「審判がストライクと言えばストライクだけど、ぼくは自分の目を信じる」と言っていた。立場がまったく違うわけだけど、ぼくは「私服=ふだん着」は「気持ち悪い」と言い続けていきたい(^^)。