気になる言葉 on 国語辞典

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用例研究「すべからく」

聴いている放送大学の講義中、「すべからく」の用法間違いがあった。1つの授業で2度あったので、担当教授が間違って覚えてしまっているのだろう。三省堂国語辞典には以下のように記されている。

すべからく
(1)当然(すべきことには)。「すべからく奮起すべきだ」
(2)[あやまって]すべて。「すべからく正直を旨としている」

すべからく」の「すべ」を「すべて」に理解してしまったんだろう。この誤用は多くの国語辞書でも指摘されている。文化庁の「国語に関する世論調査」の令和2年度の報告書でも言及されていて、「すべて」という意味だと間違って理解している人が32.1%なのだとのこと。

ただ、「それは違うんだよ!」という指摘が流行(?)したこともあってか、誤用している人は平成22年度の38.5%から、令和2年度の32.1%へと、減少傾向にはあるみたい
でもまあ。放送大学の先生も間違って使っちゃったりするんだから、用例をいくつかみてみよう。
お爺さんは岩の上に大あぐらをかき、瓢のお酒を飮みながら、頬の瘤を撫で、
「なあに、こはい事なんか無いさ。遠慮には及びませぬて。人間すべからく醉ふべしぢや。(太宰治お伽草紙』)
すべからく「大人」にならうとする心を忘れ給へ。(坂口安吾ピエロ伝道者』)
真に実在さるべきものは、かかる醜悪不快の現実でなく、すべからくそれを超越したところの、他の「観念の世界」になければならぬ。(萩原朔太郎詩の原理』)
芸術戦線の戦士は、すべからくこの信念に生きなければならぬものです。(小川未明作家としての問題』)
「飯のことで怒るなんてあさましい、男が怒るならすべからく第一義の問題で怒らなくちゃいけない、たかが腹の減ったくらい」(山本周五郎七日七夜』)

ふむ、まあ確かに。

誤用が頭に刷り込まれているのなら、正解用例をみても、自分の中の誤解はとけにくいかもしれないな。

なお、上にあげた用例は「すべからく site:aozora.gr.jp」でGoogleってみた中からとりました。


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