本稿のきっかけは『大辞泉』のFacebookページ。「異次元」って言葉が立項されてなくて、自分で驚いたよという記事が投稿されていた。
『大辞泉』では「異次元」を次のように立項することにしたとのこと。
1 異なる次元。また、次元の異なる世界。「―空間」
2(比喩的に)通常とは全く異なる考え方、また、それに基づく大胆な施策。「―の金融緩和」
あると思い込んでいました、などとFacebookにあるので、他の辞書にはあるのかと探してみた。
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ところが、ほとんどの辞書に「異次元」は立項されていない様子(「いしけん」はある)。考えてみれば、数学的な次元は定義されていても、「空間概念」としての「異次元」がどのようなものであるかは明確ではないから当たり前なのかも(間違ったことを言ってるかもしれない)。
たとえば『新明解』第七版には「異次元空間」は立項されている。
〔SFで〕われわれの住んでいる現実の空間とは別の所にあり、異なった構造(次元)を持つとされる空間。
というようなことが記されている。
果たして「異次元」が「別の所」に「あり」、異なった「構造」を持つのかどうか。あるいは「構造」が「次元」を意味するのかどうか。そもそも「SFで」と断らなければならない概念なのかどうか。
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『新明解』の定義は「現実」として「異次元空間」を把握するには無益になっているんだと思う。まあしかし、結局「次元」というものをどうとらえるかという主観によるところであり、それがために「SFで」という言葉を冒頭にもってきているわけだ。
『広辞苑』第六版は「異次元」を定義している。
1 異なる次元。
2 日常的な空間と異なる世界。
非常にシンプルな定義ながら、そもそも「次元」というものを捉える仕方にいろいろな立場がある以上、この程度の定義が妥当なところなのだろう。
『大辞泉』は日銀による「異次元緩和」をきっかけに立項しようと考えたとのこと。ただ「異次元緩和」というのは、もしかすると単に量的な差異のみを言っているような感じもあると思う。むしろ「異次元」という言葉を使うことの「妥当性」を考えるべきなんじゃないか。
つまり、「異次元緩和」に見られるように「やはり異次元はなかった」なんてオチでも良かったと思う。まあオチを付けるのが辞書の狙いではないわけだけど。
ちなみに世の中も「異次元緩和」とか「アベノミクス」については「幽霊見たり」というスタンスで接しているようだ(?)。
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