岩波国語辞典を眺めていると「性感染症」という言葉が目に入った。
ほう。気になるのは二点。「それに類した行為」ってのと、「性病」とイコールなのかどうかだ。
大御所(日本国語大辞典)はどう定義しているのかと見てみると、残念ながら立項されていなかった。
「性感」だとか「性感帯」は立項されているので、なんかしらの「配慮」から立項されていないわけではないようだ。岩波国語辞典も、昔の版(たとえば四版など)には載っていないから、わりと新しい言葉だということなんだろう。
それは良いとして、「性感染症」を立項している他の辞書が、「性交」や「性病」との関係をどう扱っているのかがちょっと気になる。
広辞苑の第七版は、上の岩波国語辞典にわりと似た定義だ。
まず「へー」と思ったのは『大辞泉』。「性感染症」が「性行為感染症」への空項目となっている。見てみる。
せいこうい‐かんせんしょう〔セイカウヰカンセンシヤウ〕【性行為感染症】
性行為によって感染する病気の総称。梅毒・淋病(りんびょう)などの性病やエイズ・性器ヘルペス症・クラミジア感染症・膣(ちつ)トリコモナス症・膣カンジダ症・ケジラミ症など。性感染症。STD(sexually transmitted disease)。
大辞泉的には「性行為に類似する行為」ってのは存在しないのか(類似していたらみんな性行為?)、それとも類似行為により感染する病は性感染症ではないのかどうか。
また、すこしユニークな定義をしているのは三省堂国語辞典。「性病」と「性感染症」は違うのだと主張する。
せいかんせんしょう【性感染症】
性行為にともなって、人から人へと感染する病気。いわゆる性病より範囲が広い。性行為感染症。STD。
残念ながら、どういうふうに「範囲が広い」のかは記されていない。でも「性病とは別のもの」と主張するのは面白いね。
それにしても、「性交」と「それに類した行為」の違いを正面切って説明するものは見つけられなかったな。追求すれば面白そうだけど、それは定義できない(定義してもしょうがない)ものなのかもしれないな。
ちょっと残念な気もするので、新明解の「性行為」の定義でも引いておこうか。ぼく的には「それは(いろいろ)違うんじゃない?」と思ったりもするんだけどね。
せいこうい【性行為】
男女間の、性欲を満たすための行為の総称。〔狭義では性交を指す〕
ま、「総称」とするところとか、「狭義」を示すところなんか、面白くはあるんだけどね。