『チャレンジ小学国語辞典』の「ふりかざす」をみてちょっと驚いた。
ふりかざす【振りかざす】
(1)頭の上にふり上げる。
(2)自分の意見や考えのもとになっているものなどを、相手にはっきりと示す。(例)規則を振りかざして相手を非難する。
(1)の意味はいい。気になったのは(2)だ。
例文は、まあわりと一般的な使い方かなと思う。「規則を振りかざして相手を非難する」。これは「振りかざす」のふつうの用例だろう。
しかし。この「振りかざす」の意味を「自分の意見や考えのもとになっているものなどを、相手にはっきりと示す」として良いのかどうか。
例文に戻るけど、「規則を振りかざして相手を非難する」というのは、相手を避難している人のことを悪く言う表現なんじゃないんだろうか。
「確かにそういう規則はあるけど、規則に則っていれば何をしても/言っても良いというわけではなかろうに」という感じ。
しかしこの語釈にある「自分の意見の根拠をはっきり示す」のは「良いこと」なんじゃなかろうか。ってか、悪い意味はゼロだと思うんだよな。
語釈の方で、「はっきり示す」ではなくて、「場にそぐわないルールを強引に適用しようとする」とか、そんなニュアンスを含めるべきなんじゃないのかな。
だけど、『三省堂国語辞典』もわりと同系列の語釈を載せる。
ふりかざす【振りかざす】
(2)相手に対して、自分の主義・主張をまっこうからおし出す。
ひとつめの語釈は略。この2番目なんだけど、どうも「悪いことである」というニュアンスがない/薄いように思ってしまうのだ。
もしかすると『チャレンジ小学国語辞典』や『三省堂国語辞典』は、「意見を振りかざす」ことを良いことないしニュートラルなことと解釈しているんだろうか?
そりゃないよねえ。
気になるぼくは『日本国語大辞典』もみてみた。
ふり‐かざ・す 【振翳】
(1)刀などを頭上に振り上げて構える。振りかぶる。振りかむる。
(2)権威ある肩書きや、一見立派で反対しようのない主義・主張などを表に提示する。かかげる。
ほらね! 「振りかざす」で大事なのは「一見立派」というこの部分だと思うんだよね。これを省いていると、ふつうに正当性を主張する場合にも「振りかざす」を使うようになってしまうと思うんだ。
するときっと、『三省堂国語辞典』あたりが「言葉は変化するのでそれも正当な使い方です」なんて「正論」を「振りかざして」くるんじゃないかな。
「振りかざす」はネガティブな意味であると、やはりきちんと記しておくべきなんじゃないかと思う。
ところで、「振りかぶる」から連想して「居合抜き」の動画を探してみた。ぼくは感性がないので、どうも面白い居合抜きが見つけられなかったな^^。