気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

驚くべき、「彗星」。なので国語辞典でも驚いてみせる『三省堂国語辞典』

「彗星」というものを、昔の人は今以上に不思議な目で見たんだろう。その過去からの歴史を伝える(?)のが『三省堂国語辞典』だ。

第四版をみて「ほう」と思ったが、第七版も基本路線は踏襲中。第七版を引く。

すいせい【彗星】
(名)
〘天〙突然(トツゼン)あらわれ、長くて白いほうきのような尾(オ)を引きながら、太陽のまわりを回る星。ほうきぼし(以下略)

つい最近出版された第七版でも「突然あらわれる」としているのが気に入った。比較のため、同じ小型辞典から『明鏡』を引いてみよう。

すい‐せい【彗星】
〖名〗
太陽系に属する小天体。多く楕円軌道を描いて運行し、太陽に近づくと明るく輝くガス雲の尾を発生する。昔はその出現を凶兆として恐れた。ほうき星。コメット。

コメットってのは、「コメットさん」世代への配慮か。

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それはともかく、たいていの辞書は、このように「太陽系に属する」のだということを記述して、「科学」へ配慮している。

しかし『三省堂国語辞典』は「国語」辞典なので「科学」とか関係ない。「突然」現れるのだ。そして楕円とか放物線軌道とかわかんないけど、太陽を回ってかえっていくのだ。

「科学」に目を配るならこんな感じか。

すい‐せい【彗星】
(comet)太陽系内の天体の一種。軌道は、太陽を一つの焦点とする楕円・双曲線などの二次曲線を描く。本体は核と呼ばれ、水・アンモニア二酸化炭素の氷に固体微粒子が混じったものとされる。太陽に近づくとガス雲を発生し、明るく輝くコマ(髪)と尾が観測される。昔、中国および日本では妖星と称し、その出現を凶兆視した。ほうきぼし。コメット。

「ひとつの焦点」ってので高校数学を思い出す人は多いんだろう。成分の記述はあるものの、但しこれだけでは本体は固体粒子が混じっているから「核」なのか、それとも粒子構造に関係なく「核」なのかがよくわからない。それで『三省堂国語辞典』は「科学」を捨てるんだな(いつも捨てるわけじゃない。すみません)。

ちなみに上の語釈は『広辞苑』第六版のもの。

「わお、彗星だ」という驚きをストレートに表す『三省堂国語辞典』は、やはりなかなか面白い存在だ。

三省堂国語辞典 第七版

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