「なかなかいないカナカナ」という回文に出会って「カナカナ」は一般的な用語だろうかと『日本国語大辞典』をみてみた。
かな‐かな
(その鳴き声から)
昆虫「ひぐらし(日暮)」の異名。《季・秋》
ふむ。一般的な用語であるらしい。
で、「ひぐらし」は秋の季語なんだな。と、思いつつ『日本大歳時記』をみてみた。
すると興味深い記述があった。
蝉は総称だが、万葉には蟬の声は一首あるだけで、他はすべてひぐらしである。蟬とひぐらしを明瞭に区別していないから、ひぐらしも蝉の総名と解すべきだという説もある。(佐佐木信綱「万葉集事典』)。
なるほど。「ひぐらし」すなわち「蝉」であった可能性もあるわけか。
そんなことを思いつつ、『日本国語大辞典』を読み進めると、「ひぐらし」の次に「つくつく法師」の項目がある。
「つくつく法師」には「おしいつく」、「法師蝉」、「寒蝉」(かんせん)などの異名があるようだ。
なるほど!
初秋の季語である「つくつく法師」に「寒蝉」はお似合いの季語か。
しかし! そういえば「ひぐらし」も初秋の季語だとある。両者の違いはなんなんだ。つくつく法師の方がちょっと後に出てくるのだろうか?
そんなことを思いながら「寒蝉」を国語辞典でみてみるとうるとらガッカリだった。たとえば『日本国語大辞典』をみておく。
かん‐せん 【寒蝉】
(「かんぜん」とも)
夏から秋に鳴くツクツクボウシ、またはヒグラシのこと。かんぜみ。寒蜩(かんちょう)。《季・秋》
「または」ってなんだよ(笑)。
昔の人にとっては、ツクツクボウシだろうがヒグラシだろうがどうでも良かったのか。あるいは佐佐木信綱が言うように「ヒグラシ」とは蝉一般を指す言葉だったのか。
「寒蝉」という言葉を知り、どこかで使ってみたいなと思った。でも、生半可な知識では使えない言葉であるようだな^^。
蝉(セミ)の羽化 (The emergence of the large brown cicada)