気になる言葉 on 国語辞典

つい気になった言葉など、辞書で引いてみる

日米安保は片務条約。

日米安保は片務条約だね。

ぼくが言ってるんじゃない。『小学新国語辞典』や『チャレンジ小学新国語辞典』が言っているんだ。

『小学新国語辞典』から引いてみよう。

にちべいあんぜんほしょうじょうやく【日米安全保障条約
1951年に日本とアメリカとの間で結ばれた条約。日本にアメリカ軍の基地を置くことを認めた。

日米安全保障条約は、日本に米軍基地をおいてあげますよ、というサービス条約なんだそうだ。

アメリカには何の義務もなく、一方的に日本がサービスを提供する条約なんだな。

ついでに『チャレンジ小学新国語辞典』の方も引いておこうか。

にちべいあんぜんほしょうじょうやく【日米安全保障条約
1951年に、日本とアメリカの間で結ばれた、軍事に関する条約。これにより、日本はアメリカ軍が日本っくないに基地を置くことを認めた。略して「安保」「安保条約」などともいう。

ね。こちらでも日米安保片務条約だと言ってるよ。なんかアメリカの大統領が「アメリカばかり義務を負っている」と発言したとかいう話を聞いた気がするんだけど、違うじゃんね。日本が一方的にサービスを提供している条約なんだ。

って、もちろんそんなわきゃない。上2つの小学生辞書は、かなり意図の入ったミスリードなんじゃないのかなあ。

小型辞典(『三省堂国語辞典』や『新明解』)には「日米安保条約」がないようなので『日本国語大辞典』を見てみよう。

にちべいあんぜんほしょうじょうやく[‥アンゼンホシャウデウヤク] 【日米安全保障条約
〔一〕「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」の通称。昭和二六年(一九五一)サンフランシスコで、平和条約締結と同日に調印され、同年発効。全文五か条。アメリカ軍の日本駐留の承認、第三国の日本駐留の禁止、外国の教唆・干渉による内乱時のアメリカ軍の出動などを規定する。昭和三五年失効。旧安保条約。
〔二〕「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」の通称。旧安保条約に代わるものとして昭和三五年ワシントンで調印され、同年発効。全文一〇か条。新しく相互防衛の義務などが加えられた。一応の期限は一〇年、以後は自動延長となり、また一年の予告でおのおの一方的に廃棄することができる。新安保条約。

片務条約の書き方じゃないね。双方の合意に基づき、相互利益を目指す条約であるような書き方だ。

 ぼくは小学生の頃。「軍」とかに関わることはぜんぶ「馬鹿の所業」だというような教育を受けた(地域的な問題だったんだと思う)。そのせいで、ぼくはずいぶんバランスを失したガキンチョになってしまったなあ…。

小学生向け国語辞典には、もうちょっと頑張って欲しい気がする。


日米安保巡るトランプ発言で菅長官「片務的でない」(19/06/27)