「注射」を国語辞典でみたことなんてなかったな。けっこう面白い。
『チャレンジ小学国語辞典』では次のようになっている。
ちゅうしゃ【注射】
皮膚に針をさして、薬を体の中に入れること。
『三省堂国語辞典』も同じような感じだ。
ちゅうしゃ【注射】
針をさして、液体の薬をからだの中に入れること。
簡にして要な説明だなあと感心しつつ、本当にそうなのかと疑問ももった。
「注射」には、「皮膚に針をさして、薬を体の中に入れる」という以外の意味はないのかどうか。
結論から言えば、あるみたいだ。例えば夏目漱石の『行人』に次のような文章がある。
客は蒼蠅いほどお重に同情の言葉を注射した後、「じゃ残念だが始めましょうか」と云い出した。
客は針をさしてもいないし、薬を 注入してもいない。上に挙げた語釈以外の意味があるはずだ。
ちょっとわかりにくいんだけど、『広辞苑』をみてみる。
ちゅうしゃ【注射】
(1)水をそそぎかけること。転じて、ある物事に視線や注意を向けること。
(2)薬液を注射器で、生物体の組織または血液内に注入すること。
なるほど。これならば漱石を解釈することもできそうだ。
参考までに『日本国語大辞典』もみてみる。
ちゅうしゃ【注射】
(1)液体や光線、電波などをそそぎかけること。転じて、ある物事に向かって、視線や注意などを絶えず集中させること。
(2)液状の薬剤を注射器で直接体内に注入すること。注入する場所により皮内注射、皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、臓器内注射などと呼ぶ。内服の場合より効力が早く現われる。
「電波をそそぎかける」ってのが面白いな。どういう状況/ことなのかよくわからないけどね。
ちなみに(1)の意味の用例として、『行人』のフレーズを掲載してもいる。
「注射」に「針をさす」以外の意味があり、かつ「電波を注射する」なんていう使い方があるらしく、さらにはそれが『日本国語大辞典』に載っていることを知った、意義深い日だった(^^)。
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